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2011年10月

「ひまわり 春のアサガオ」 5

 スズカに彼氏が出来た。信じられない事だ。それを知った日から私は何をしてもうわの空だ。スズカに話の続きを聞くのも怖いし、その後連絡は来たのかどうかも気になりながら聞けない自分がいる。ただ言えるのは、その話をしてからのスズカは日増しに暗いオーラに包まれている事だ。

 唯は最近バイトが忙しいらしい。なんのバイトをしているかは教えてくれないけれど、以前より険しくなった顔が日々の労働の疲労度を物語っていた。
 スズカも唯も相手をしてくれなくては私は一人ぼっちだ。なんとなく途中で降りた駅は大学生が大勢いた。私はふとスズカの合コン話が頭をよぎり、私も合コンにでも行ってみようかなと一瞬考えてみる。7秒後、人見知りで基本的にまず初対面の人間を疑ってかかる私にはムリだなと答えを導き出す。まあ、用心深い方が都会の荒波に飲まれにくいだろうと自分を慰めながら、大学生が行き交う見知らぬ道を歩いていた。

 その時、スズカからメールが来た。
「私、いま高田馬場という所にいるんだけどこれから会える?」
 日頃はメールを即レスしない私がすぐに返信した。
「奇遇だなあ。私もそこにいるよ今どこにいるの?目印になるものはある?」

 スズカから電話が来た。来たと同時に私の後ろの方から高いトーンの京都弁が聞こえてくる。

 見知らぬ喫茶店に入り、スズカはうつむいたままでいきなり議題を出してきた。
「うち、別れた」

 短い言葉にそれなりに事態を把握しながら、私はどう接すればいいのかを考えていた。私は実は人の恋愛話は苦手なのだ。私なんかに気の利いたアドバイスが出来るはずもないし。

「彼なあ、もう会いたくないって、うちみたいな変なオタク女はもう嫌やって」

 スズカはうつむきながら必死に涙をこらえているのはわかった。気の強い子だから、人前では泣きたくないのだろう。多分、自分が失恋した事を人に話すのだって本当は嫌かもしれない。

「でもなあ、あんたもオタクやんって言ったんよ。コスプレが趣味とか言ってたやんって。そしたらなあ、俺はお前とかお前の友達に合わせていただけだ!って言うんよ。員数合わせでオフ会に来ただけで、仕方がないから話を合わせてただけだ!って」
「もう話を合わせて好きでもない趣味の話をしたり、そういう店に連れていかれるのは苦痛なんやて。最初はうちに気に入られたくて話を合わせてたけど、もうムリだって」

 スズカにとって、おそらく初めて好きになった男性はクズだったという事か、簡単によく知らない男を外見で選ぶからだと私は思ったが、そんな本音は勿論口には出せない。スズカは本気で好きだったのだろうから、それを私がとやかく言う事は出来ない。
 しばらく沈黙が続いた二人の空気は、結局結論めいたものは何も生まず流れていった。私は「泣いて気が済むのなら、気が済むまで泣くしかないのだ」と思いながら、涙をこらえるスズカを見つめていた。

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「春のひまわり 春のアサガオ」 4

 私はスズカにいい人が出来て楽しく過ごしているなら、それで別に構わないと思っていた。ただ、秋になっても学校に姿を見せないスズカが心配になってきた。
 唯にスズカの事を聞かれた翌日、偶然とは面白いものでスズカが学校にやってきた。スズカは少しふっくらしたように見えるが、目は明るくない。昼休みに話しかけてみたが、喋ってみればいつものスズカだった。でも、目が明るくないのが気になる。

 帰りにスズカと学校の近くの公園で少し話をした。スズカが人のいない所で話がしたいというのだ。

スズカ「ウチなあ、少し前に彼氏が出来たんや。前にオタクのオフ会に出席するって言ってたやん、あれで見つけた」

私「えっ、スズカは男苦手だったよね?どういう事?」

スズカ「苦手やと思ってたんやけど、オフ会に一人いい人がおってね、最初は女の子かと思ったんよ、色白で可愛いし髪も長くて」

私「ああ、なるほど。漫画みたいな美少年がいたと」

スズカ「でなあ、その人を女の子かと思って話しかけたんよ、そしたら男だったんや(苦笑)でもな、とても楽しくていい人やったんや」

 スズカはその男の子を、好きな漫画の好みも合うし、なんだか話しやすい人だし、マメにメールくれたりして良い人なのだと言った。そして、その人と知り合ってから三回目のデートで告白されて付き合い始めたのだと言った。「彼って、アニメイトの店先で告白してきたんよ。店で探していた本を見つけてテンション高かったウチを見て、なんだか可愛かったんだって」

 私はスズカの笑顔が本当の笑顔でないような気がしていた。彼女もやはり隣に居てくれる人が欲しかったんだと思うと、頑なだったこれまでの心の壁はいったい何だったんだろうと思う反面、これで良かったんだろうかとも感じた。

「スズカ、今幸せ?」
 私は野暮な事をぶつけてみた。多分、やきもち半分、冷やかし半分。

「実はな、彼が一週間連絡くれないんや。メールも返ってこない。電話も出てくれない。家に行ってみようかと思うんやけど、なんかそれは悪いかなって」

 スズカの顔から笑みが消えた。なんか悪い事を聞いたような気もしたが、質問に対する答えにもなっていないところはスズカらしいなと、心で苦笑いした。でも、本当はどうなんだろうか?幸せなのだろうか。気になり始めたところでスズカはバイト行く時間だからと立ち上がった。

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