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2011年9月

「春のひまわり 春のアサガオ」 3

 スズカは中学高校と女子校で三人姉妹の真ん中な子だ。京都の出身で、通っていた学校は結構お嬢様学校らしい。父親は大阪の商社で働き、海外出張などで家にいない事も多く、家は母親と姉妹の女だらけの家庭だったそうだ。
 親はスズカを大学に行かせたかったみたいだけど、スズカは勉強が嫌いで毎日机に座って小説を書いているような子。勉強よりも自分の好きな事をしたくて専門学校に入ってきた。父親がスズカに甘く、最終的には父親が折れて大学進学はなくなったとスズカは笑いながら話してくれた。

 私が専門学校に入って初めて出来た友達がスズカで、4月から7月くらいまでは色んな話を二人でした。

 ・スズカは中学の時にいじめにあい、それで登校拒否になった過去がある事。
 ・そんなスズカを勇気づけたのは親でもなく、友人でもなく、実在の人間ではない漫画のキャラクターである事。
 ・高校時代、同人誌の世界にハマり、自分も同人作家デビューをし、好きな漫画やアニメのキャラで百合小説を書いてコミケなどに参加している事。

 そして、彼女は極度の男性嫌いである事。

 スズカは6月の終わりにこんな事を言っていた。
「今度、ウチの高校の時の友達の誘いで合コンに行くんよ。友達は東京の大学に入ってそこで漫画サークルに入ってんねん。ウチは合コンなんて絶対イヤやと言ったんやけど、その子が参加する人は男も女もみんな二次元好きやから安心しいやと言っててなあ、要はオタクのオフ会やねんな(笑)」
 スズカは男を隣に座らせないという条件なら参加してもいいと友人に伝え、友人もどうしてもスズカには来てほしいという事で、その条件をOKしたと言っていた。詳しくは聞かなかったけれど、どんな合コンかわからない私は頭の中で「みんなコスプレとかして参加するのかなあ」などと、よくわからない想像をしていたのだった。

 その後、スズカからは合コンの翌日に「合コン、いやオタクのオフ会無事終了」というメールがあっただけだ。学校にも来てないし、メールも電話もその後はない。スズカはiPhoneを使ってTwitterをやっているのでチェックしているのだが、こちらもずっとつぶやきがないまま。

 心配そうな、いや唯はいつも顔つきが深刻そうだからこの顔がデフォなんだろうけれど、そんな唯を安心させるために私は嘘をついた。

「スズカはなんかね、いい人が出来たみたいで学校どころじゃないみたい」

 真面目な性格の唯はかえって心配そうな顔になり、
「えっ、マジで?スズカって男が苦手なんじゃなかったっけ?どういう事?相手は誰?」
と興奮気味にまくし立ててきた。私の嘘は逆効果だったみたいだ。

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「春のひまわり 春のアサガオ」 2

 私は実は本当は専門学校なんて行きたくない。なんとなく美容師にでもなるかと思っただけ。美容師になって、まわりは女の子ばかりの環境で仕事がしたいだけ。エステシャンとかも考えたけど、就職先が限られていそうだから、そこは現実的に考えて美容師にした。

 ああ、今日も一人で学校から駅までの道をぼんやりと歩く。校内ではまわりの子達と楽しそうに話しているが、帰りくらいは一人になりたい。そんな雰囲気を充満させているから誰も声を掛けてこない。だが今日は違った。

「ハルカ、ちょっと待ってよ」

 唯が後ろから走ってきた。仲村唯。栗色のショートが似合う、ちょっと老け顔の子。同い年とは思えないくらいしっかりしているので私はよく「唯は子持ちな奥様だもんね」とからかう。唯はそれを言われるのは嫌みたいで、必ず真顔で怒るのだがケンカにはならない。

 唯がちょっとコーヒーでもと言うので、駅前の有名店なカフェに入る。私はこの店が苦手だが、唯はまんざらでもないみたいだ。唯だって田舎者なのだけれど。

 唯はコーヒーを二口ほど飲んでからシリアスな表情で聞いてきた。

「最近、スズカが学校に来ないけど、なんか聞いてる?」

 清水涼香、スズカはとてもおとなしい子で、漫画が大好きで、同人誌に小説も書いている子である。そういうキャラの子がなぜ美容師に?と思うのだが、本人曰く、美容師をやりながら携帯小説家をやりたいのだそうだ。洋服には無頓着な子だけれど、メイクや髪型にはウルサイ子で、人の髪をいじってみたくて仕方がないみたいだ。
 そう、スズカはよくわからない子だ。

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