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「星と海の記憶」 4

 七月の終わりの週末、私は小夜の漁港近くにある細い商店街の一角にある小さな居酒屋に入った。ここは初老の主人が一人で回している店で、6人座れるカウンターに、四人用のテーブルが三つある。漁港から仕入れてくる魚介類がとても美味しく、この町で私が一番贔屓にしている店でもある。
 扉を開けると先客が6人ほどいた。誰も座っていないカウンターに座り、地酒と今日のおすすめを三品頼んだ。
 少し酒が回り始めてきた頃、私は主人に聞いた。
「星見にセーラー服が制服な学校ってありますか?」
 主人は一瞬びっくりしたような表情を浮かべたが、「俺は知らんな」と首を捻りながら淡白に答えた。すると、後ろのテーブルで飲んでいた二人組の男の一人が「あるよ」と答えてきた。
「星見って言っても星見駅から郊外に向かってバスで一時間近く、確か40分くらいだったと思うけど、そこに星見審美学園という、この辺りじゃ一番の進学校な女子校がある。まあ、少子化の影響で来年からは共学になるらしいがね」
 私は振り向いて話を聞いた。その男の仲間が「お前なんで女子校の事にそんな詳しいんだ?」と冷やかしたが、「嫁の妹の娘さんが通っているんだ」との事であった。

 中年と初老の男しかいない居酒屋では、女子校に関する情報はこれ以上は望めなかったのだが、会話の流れでわかった事は、小夜から通うには遠い学校であり、この辺りの子供はほとんどが星見にある県立星見高校か星見商業に進学するという事であった。
 ただ、彼女がそのどちらの学校でもないからこそ、星見鉄道を利用しているのだと確信も持てた。星見高校も星見商業もバス通学で通う場所に位置する学校だからだ。

 私は何を調べたいのかもよくわからないまま、彼女の事をもっと知りたくなっていた。勘が鋭い方ではないのだが、存在が強く引っかかる。あのSOSみたいな独り言のせいだろうか。
 私はインターネットで星見審美学園に関わる事件について調べてみる事にした。何故そうさせたか、私にもよくわからないのだが、彼女の存在に何か事件性めいたものを感じずにはいられない。そんな根拠のない衝動が私を突き動かしてくる。

 「星見審美学園 事件」で検索すると、モニタには二つの事件が表示された。両方とも教師による不祥事であり、去年の出来事であった。

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