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居酒屋大全/ 太田和彦

 一般的には「居酒屋」というとチェーン系の飲み屋を指すみたいだが、あれはチェーン系飲み屋というジャンルであって居酒屋ではない。
 チェーン系飲み屋の良い言い方がないので、私はチェーン系などと呼んでいるが、あの手の飲み屋は安さや、(注文が出てくる)速さを買いに行く店であって、酒や料理を味わう店ではない。
 ○○ハイの類いは、ただ酔えれば良いという仕上がりで、カクテルなどはまさに「なんちゃってカクテル」であり、これをカクテルと呼んでは(紺野あさ美さんのお父さんを始め)町のバーテンダー達に対して失礼だろうと思えるほど。
 料理には関してはノーコメントだ(苦笑)。

 私の回りで、30過ぎたら(人に誘われたのならともかく)自分からチェーン系飲み屋に行ってはいけないと語っていた人物がいるが、確かにいい大人が行く類いの店ではないとは思う。
 それでも、金欠気味な私は泣く泣くチェーン系飲み屋を利用する昨今だ。

 そんな事をこうして書いている私だが、やはり20代前半まではチェーン系飲み屋ばかり行っていた。味なんかよりも、友人達とワイワイ盛り上がる事が大事だったからだ。だから、そういう人達のためにチェーン系飲み屋がある事は否定しない。

 角川文庫から出ている「居酒屋大全」は、「居酒屋とは何なのか?」を考えさせてくれる一冊である。
 グルメ情報誌のライターなども務める作者が、酒にこだわりを持つ友人(男女)を集めて、理想の居酒屋について語ったり、美味しい酒の飲み方について語ったりする前半は対談形式で展開する。
 対談形式だから読みやすく、チェーン系飲み屋や大量生産の酒への批判もユーモアを交えて展開する。食文化と食の安全への関心は一般にも注目されるところであり、ファストフードやコンビニ食、インスタント食品に対する安全性への警笛を書いたベストセラー本「買ってはいけない」がかつて注目されたように、本来はチェーン系飲み屋の提供する飲食物にも疑問を感じる人が大勢いても良い筈であると考えさせられる。

 後半は、理想の居酒屋を求めて東北・新潟を旅する一行の姿や、東京・大阪のオススメ店の情報など、グルメ情報誌的な内容も散りばめてある。血液型別居酒屋での振る舞いなどというページもあり、こういう企画へのサービス精神はライターさんならではであろう。

 一冊読み終わる頃には、居酒屋の良さ、美味い酒を手間隙かけて作る人達の努力、色んな知識も身につき、またスマートな大人の飲み方も意識出来るようになる一冊。

 表紙のイラストは、テレビドラマにもなった大ヒット漫画「夏子の酒」の尾瀬あきら氏が描いている。
 「夏子の酒」は新潟を舞台に、主人公夏子が幻の米を栽培し、その米から理想の酒を作る実話を元にした話だ。文化論からグルメ情報までを、わかりやすく楽しくも真面目に綴った綴ったこの本に相応しい表紙だと思える。

 ちなみに、居酒屋とは本来は「家庭料理をリーズナブルなお値段で提供する飲み屋」である。チェーン系飲み屋はリーズナブルではあるが、どちらかと言えば家庭料理ではなくファミレス料理であると私は思っている。

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